最近ではプロダクトの開発段階からデザイナーをジョインさせて、デザインの方向性を固めた上でサービスの開発に臨む起業家が増えてきました。
それでもまだ社会の中で、「デザイン」というものは軽視されがちで、まあせいぜい、“あったら良いけど無くても良いもの”くらいで捉えられているのが現状です。
なぜデザインはこのような仕打ちを受けているのか、僕は時々考えてみます。
そして最近一つの答えとして、デザインが「何かを生み出す」直接的なスキルではないから、という考えを持つようになりました。
「ハッカソン」で見るデザイナーの”立場”
起業家界隈で人気のイベントとして“ハッカソン”というものがあります。
これは基本的には、起業家(発案者)とエンジニア、デザイナーが一つのチームになって何かを作り上げる、というイベントです。
作り上げるものは、時にWebサイトだったり、ロボットだったり、イベントによってまちまち。
なぜ起業家はこぞってこのイベントに参加するのか。
それは、普段自分の周りにはアイディアを真摯に聞いてそれを形にしてくれる都合の良い協力者がいないからです。
そしてその協力者とは多くの場合、デザイナーではなくエンジニアなのです。
たしかに最近の起業家が語るサービス・アイディアの中でITを介さないものはほとんどないので、その実現にエンジニアは必須だというのは理解できます。
デザイナーである僕の目から見ても、その考え方は間違っていません。
一方で起業家たちがデザイナーをどのように捉えているかというと、「プロダクトをオシャレにしてくれる人」という程度。
もちろんこれは間違ってないし、確かに、デザイナーが加わればプロダクトは今よりぐっとオシャレになります。
だが、デザイナーの役割は本当にそれだけでしょうか?

デザイナーの役割とは何か
デザイナーの役割はプロダクトをオシャレにするだけか?
もちろん答えはNOです。
デザイナーはプロダクトの方向性を見極めてブランディングし、ユーザービリティを高める役割を担っています。
だからデザイナーの存在を軽視すると見た目に限らず、サービスのあらゆるクオリティが下がることになるのです。
こういった部分が見えていないからこそ、開発段階からデザイナーを必要とする起業家はいまだに少数なのだと思います。
そして、多くの起業家は“形にしたがる”。
「何かを形にする」という点においてはデザイナーよりもエンジニアが優れていると言っても良いでしょう(起業家の目線で考えれば)。
起業家が作りたいプロダクトの多く、Webサイトやアプリなどは、ひとまずエンジニアがいれば作ることができるからです。
エンジニアとはそういったスキルを持った人たちです。
それに対してデザイナーは常にデザインをするだけ。
例えば名刺を作るとき、デザイナーはレイアウト、カラートーン、フォント、使用する紙の種類に至るまであらゆるものを検討します。
ではその後はどうでしょうか?
実際に紙を調達し、印刷し、名刺としてプロダクトを完成させるのは印刷屋。
デザイナーはいつだってモノづくりの上流にいます。
最下流には印刷屋、エンジニア、工務店などがいて、実際にプロダクトを生み出しているのは彼らです。
正直なところ、デザイナーは一人では何かを生み出すことができません。
だからこそ、プロダクトの完成を急ぐ起業家たちは、必然的に、デザイナーよりもエンジニアを求めるのです。
デザイナーは“本質”を見ている
デザイナーはプロダクトをオシャレにするだけが仕事ではありません。
そのプロダクトの本質を見極めて、それを本来あるべき姿に作り変えます。
あるべき姿とは、起業家の思いをしっかりと反映し、ユーザーの使いやすさ・分かりやすさに最大限配慮した姿です。
確かにデザイナーはあらゆるものをデザインしますが、実際にそれを形にすることはできない不思議な職業です。
でも、僕たちデザイナーがいることでプロダクトは「本来の形」に近づくのです。
起業家が本当にあるべきものを作り出すためにも、自身の情熱を形にするためにも、デザイナーは欠かすことのできない存在です。
それに、起業家たちが見つめている方向が正しいのか、プロダクトの方向性は間違っていないか、僕たちデザイナーはそれを見極めることができます。
デザイナーは常に本質を見つめているからです。
だからデザイナーは常に素晴らしいデザインを生み出すことができる。
スタートラインに立った時に、間違った方向に走り出さないように、道をそれた時にしっかりと本来の道に戻れるように、起業家はもっとデザイナーと密接に関わるべきだと思います。
もしあなたがデザイナーをそれほど重要視していないのならば、一度立ち止まって、デザイナーの本質的な価値に目を向けてみるべきかもれません。
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