僕がデザイン事務所に入って最初に教わった8つのこと

デザイナーとして働く

大学を卒業して、デザインに対する興味だけを持ってデザイン事務所に入って数ヶ月が過ぎました。
少数精鋭の職場の中で、新人ながらもかなり幅広く、多くの仕事をこなすようになりました。

これから数年僕はこの環境に身を置いて自分のスキルを高めていくと思いますが、きっと最初に教わったことはこの先を進んでいく上でものすごく重要なことだと思います。

ということで今回は、僕がデザイン事務所に入って最初に学んだことを、まとめていきたいと思います。

今回まとめるのはデザインのテクニック的な事ではなく、考え方や進め方といった少し抽象度の高い内容です。

僕がデザイン事務所に入って最初に教わったこと

1. 最初から作り込まない

僕が一番最初に教わって、今でも常に意識していることが、「最初から作り込まない」ということです。

デザイナーとしてはやはり素晴らしい作品を作りたいと思うので、ラフを作るべき段階からパソコンに向かってガッツリと作り始めてしまいがちです。

でも、最初は最低限ほかの誰かに伝わるくらいのラフさで良い。
なんなら裏紙に鉛筆を走らせるだけで良い。
なぜなら、最初から作りこんでしまうと途中で方向修正するのが難しくなるから。

家を作る時だって、最初から当たりも付けずに土台を作ってしまったら、後から「やっぱり壁はここじゃない」と言われた時にはもう後戻りできない。

デザインは常に修正の連続です。
それに柔軟に対応できるように、デザインは最初から作りこんではいけないのです。

2. 写真を撮りまくる

デザインのセンスを鍛えたいなら、写真を撮りまくること。
でもただ闇雲に撮るだけじゃ意味がない。
何が美しいか、どうして美しいかを考えながら写真を何枚も撮り続けること。

デザイン事務所の社長の言葉

デザイン事務所に入ったばかりの頃に言われたこの言葉が、今でも頭に染み付いています。

写真は360°、上下左右に広がった世界を特定の大きさで切り取る行為です。
だからこそ構図や被写体の位置関係、ピントの当て方が重要なファクターになってきます。

これはデザインでも同じこと。

どんなレイアウトで、それぞれの要素をどのように並べて、何に注目させるのか。
それを常に考えることこそがデザインです。
意識して写真を撮ることはデザインに向き合いながら研究することによく似ています。

3. スケッチしてみる

グラフィックなどの平面的なものでも、建築、プロダクトのような立体的なものでも、まずはスケッチしてみることが大事。

紙一枚を用意して自分が考えるデザインを簡単に、短時間でスケッチしてみる。
そうすることで自分の考えがまとまって、デザインの方向性が見えてきます。

特に、建築など立体的なものをデザインする場合はスケッチが必須。
立体的なものを立体的に捉える視点を磨いておくことで、デザインの精度は大きく向上するはずです。
グラフィックであってもWebであっても、自分の中にあるイメージをまずは紙に書いてみる。

そのプロセスは非常に重要です。

イメージやアイディアは自分の中にあるだけでは意味がありません、それを誰かに伝えたり表現して初めて意味を持つのです。
だからまずはそのアイディアと向き合ってスケッチしてみる。

そうすることで初めて、アイディアは動き出します。

4. よく見て、よく考える

音楽もデザインの一種であるという考えもありますが、基本的にデザインは目で見るもの。
だからこそデザイナーは、目の前のものをよく見て、よく考える必要があります。

「よく考える」、、とは目の前にあるものに疑問を持つということです。

なぜこの形なのか、なぜここにあるのか、どうしたらもっと良くなるのか?
そういった疑問を持ち、物事の本質を見極めることこそ、デザイナーの役割であり、デザインの力です。

僕は今でもよく「本質を見ろ」と言われます。

日々のデザイン業務に追われていると、いつのまにか細かな視点ばかりのなってしまい、物事を俯瞰して捉えることができなくなってしまいます。
そうなれば成果物のクオリティは下がり、プロジェクトは軒並み失敗に終わってしまいます。

デザイナーは常に、細かいところを注意深く見る視点と、物事を俯瞰して見る視点、そしてさらにはそこにある「流れ」を見る視点
これらを併せ持っていなければならないのです。

5. アプリを使いこなさない

デザイナーはソフトをガシガシ使ってデザインだけやっていれば良いわけではありません。

デザイン以外にも、クライアントとのコミュニケーション、個々の案件のスケジュール管理、打ち合わせの資料作り、などなど重要な仕事は多く存在しています。
Photoshop、Illustratorが使える、というだけでデザイナーを名乗る人も少なくはありません。

ただし、それはデザイナーとしての必要条件であって、ソフトを使いこなせる人がデザイナーなわけではありません

そして、アプリの中でも本当に必要な機能はせいぜい十数個くらいです。
アプリの機能を全て理解して、それを使いこなす努力をするよりも、相手の希望を的確に理解して最適な答えを提供する能力を磨くべきです。

僕もアプリの機能を全て理解した上でデザインに取り掛かるべきだと考え、本を隅々まで読んでいたのですが、このことに気がついて努力の方向性を見直しました。

6. 他の人が作ったものを見て学ぶ

デザイン事務所に入ってまず驚いたのが、先輩たちがネットや本で他の人がデザインしたものをしょっちゅう見ていることでした。

僕が想像していたデザイナーは、これまで学んだことをベースに自分の力だけでオリジナルのデザインを作り出す人たち、でした。

しかし、デザインに行き詰まるとみんな以外と他のデザイン誰かがデザインしたものを参考にするんですよね。
もちろん本で見たデザインをそのまま使って「パクる」ことはありませんが、困ったらまずはPinterestを見ています。

よく分からないならまず他のデザインを参考にすること。
これは決して恥じることではないし、多くのデザインを参考に生み出されたものの方が、自分一人で作ったものよりクオリティが高いことばかりです。

お客さんからしても、「俺のクリエイティビティを最大限発揮しました!」と言われるよりも、「様々なデザイン事例の中から最適と思われるものを参考にしました!」と言われる方が遥かに良いはずです。
お客さんからしてみればデザイナー個人のクリエイティビティなど、どーでもよいことです。

7. 余白と構図を意識する

デザインのクオリティは余白と構図で決まります

要素と要素の間には十分な余白が必要で、それぞれが最適な構図に収まっていることが重要です。
逆に言えば、それさえうまくできていれば全体的なデザインのクオリティは、確実に高くなるのです。

そしてデザインの”センス”とは、優れた余白と構図を自然に生み出せるということです。
決して、ハイセンスなプロダクトをいくつも生み出せたり、誰も見たことがないような作品を描くことではありません。

誰もが納得し、すんなりと理解できるように、最適な余白と構図を瞬間的に生み出すことです。
だからこれは、生まれ持ったものではないし、長年の鍛錬で身につけることができるものです。

また、構図は理論上いくつかのパターンが存在するのでそれをある程度押さえておけば問題ありませんが、余白は感覚値。
というより”センス”という言葉に近い存在です。

だからこそ、常によく観察し、自分の作ったもの・他人の作ったものの裏側、真意を読み取る必要があります。
本を読めば身につくものでもなければ、闇雲に作品を作り続けて得られるものでもありませんが、デザインは全て余白と構図で決まります。

それを常に意識し、いつかそれを本能的に、自然に生み出すことができるようになれば、きっとあなたは「センスの良いデザイナー」と呼ばれることになるでしょう。

8. 立場を考える

そして、デザイナーにとって実はかなり重要なのが、それぞれの立場を考えることです。

自分の作ったデザインには、多くの人が様々な意見をぶつけて来ます(あなたがデザイナーにとって理想的な環境にいるならば)。
先輩のデザイナー、下請けの業者、仕事を依頼しているクライアント。

さて、この時、誰の意見を聞き入れるべきか。

あなたより優れているデザイナーか、あなたを信頼して仕事を依頼してくれたクライアントか、はたまた、そのデザインに誰よりも真摯に向き合ったあなた自身か?

基本的にデザイナーは、クライアントの意見をきちんと聞き入れるべきです。
なぜなら、お金の流れの中でクライアントは常にデザイナーよりも上流にいるからです。

そして、デザイナーは下請けの業者(デザイナーを含む)の意見はそれほど尊重すべきではありません。

なぜなら、お金の流れの中で下請けの業者は常にデザイナーよりも下流にいるからです。
もちろん、全ての意見を無視して良いわけではありません。

下請けの業者が素晴らしい意見を言うこともあります。
それに大抵の場合、クライアントから出てくるのは的外れで無知な意見です。それでも、デザイナーは基本的にお金を支払ってくれる立場の人物の言うことを聞く必要があります。

プロジェクトの中で自身が置かれている立場を正しく理解しなければ、いずれ板挟み状態になり、最適なデザインを生み出せなくなってしまいます。

誰の意見を聞くべきか、というのは非常に難しい課題ですが、基本的にはお金を払っているクライアントの意見を聞くのが正解だと言えるでしょう。
ただその前提として、自分自身が納得しているかどうかが最も重要になってきます。

まとめ

今回は新卒でデザイン事務所に入った僕が最初に学んだことを8つのエッセンスに分けて紹介しました。
最後に8つの要素をまとめておきます。

  1. 最初から作り込まない
  2. 写真を撮りまくる
  3. スケッチしてみる
  4. よく見て、よく考える
  5. アプリを使いこなさない
  6. 他の人が作ったものを見て学ぶ
  7. 余白と構図を意識する
  8. 立場を考える

今でも僕は最初に教わったこの8つのエッセンスを意識しながら、日々デザインを作り続けています。
これは突き詰めていけば、「そもそもデザイナーとは何者か」という話にまで広がっていきそうなのですが、それについてはまた別の機会にお話しすることにしましょう。

これから先どれほど難しい壁に当たっても、どれほど大きな成功を収めたとしても、僕はこの8つのことを忘れることはないでしょう。

もしデザイナーとして働いている方は復習として、これからデザインに関わる方は最初の教科書として、この8つのエッセンスを覚えておいていただければと思います。

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